私は貝になりたい

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2008年・日本

 

理髪店を営んでいる清水豊松(中居正広)は、戦時中に捕虜を殺害した罪でBC級戦犯として逮捕されてしまう。死に怯えながらも、彼は家族の元へ帰れることを願っていた。

 

 

 

 

 

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予告の「どうして…どうして、何で俺が!」を初めて見た時そのセリフと表情でギャン泣きしてしまった私がようやくこの映画に手を出した。というのも今まで少し避けていたのだ。ただ単純に戦争映画が苦手だというのもあるし、つらい展開があるんだろうなというのもあるし、絶対泣くじゃん…?まあ案の定泣いたんだけど。泣いたっていうかもう号泣。オエッ!!ってえずきまくって過呼吸になりかけるぐらいわんわん泣いた。ある意味映画館で見なくて正解かも。

 

時は第二次世界大戦、主人公の清水は理髪店を営む平凡な理髪師なのだが、ある日突如赤紙が届く。彼は片足を引きずっているんだけど、ある程度身体に不調があっても駆り出されてしまう時代だったんだなあ…。

清水は内地で訓練を行っていたんだけど、そこである事件が起こる。日々上官に痛めつけられていた彼にとんでもなく残酷な命令が下される。

そして時は流れ、戦争が終わり、アメリカに負けた日本は戦犯を全国から探し出して裁判にかける日々…。上司も部下も関係なく裁かれていく。この中に清水も含まれていた。その事件のせいでね。

英語でまくしたてられ、日本語通訳はちんぷんかんぷん、こっちの言いたいことは何も伝わらない…そんな状況下で彼にくだされた判決は、絞首刑だった。

 

当時のことを考えると、こういうことってきっと頻繁にあったんだろうなと思う。お互いがお互いを傷つけあって憎みあって、でも人間同士でこんなことすべきじゃないのは分かっているけど、やっぱり身内を殺された人にとっては許せないんだよね。国関係なく。

 

で、清水がいれられる監房で相部屋となったのは草彅剛演じる大西。この人が素晴らしいんだわ~…!前からそこにいた彼は監房の仕組みを教えてくれるんだけど、それが淡々としてて特に何も…みたいな。おかしいことは起きてないよ、ただ住んでるだけだよ、みたいな空気すら醸し出してる。でも、毎週木曜日、誰かが処刑台へ連れて行かれる日だけは違うのだ。色んな部屋からお経を読み上げる声が聞こえ、皆がみな自分じゃありませんようにと祈る。

この一連のシーンで印象的なのは「嫌な時代に生まれ、嫌なことをしたものです」というセリフ。ぐっと唇を噛みしめて、辛そうに涙を浮かべる大西。見てるこっちも辛いよ…つよぽん…。私つよぽんと中居くんが相部屋のシーンが一番辛かったよ…。

 

捕虜を殺していないのに絞首刑とは!目指せ減刑!と、奮闘する清水。新しく相部屋になった西沢(笑福亭鶴瓶)に英語を教えてもらい、大統領への嘆願書を書く。清水の妻・房江(仲間由紀恵)は署名を集めるために乳飲み子を背負って必死に歩き回る。現代に生きる日本人のほとんどは分からないであろう彼らの気持ち…。

監房に入れられる時間が長くなるにつれてだんだんみんなも気持ちが落ち着いてきて、看守の米兵とも不思議な絆が生まれたりする。戦勝国と敗戦国だけど、やっぱり人同士は繋がることができるんだよなあ。

EDでミスチルの「花の匂い」が流れた瞬間目から涙がバーーーー!!した。トドメさされた。

 

どうか見てほしいのは、清水の鋭い眼光。あの目は人間の目じゃなかった。

見てるこっちの息が詰まるほどの目つきと震える身体、想いを、味わってほしい。

理不尽な罰とは、人を人でなくしてしまう。

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